「模擬葬儀」で自らの葬儀を観客席から見た養老孟司さん「葬儀は残された家族や親しい人たちが納得するためのもの。死んでしまう人間がを考えても意味がない」

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「養老孟司さん(87才)が、こちらに向かう際に事故にあわれ、昨晩お亡くなりになりました。私どもで養老氏の葬儀を行うことになりました」。2004年11月、曹洞宗の僧侶が集う講演会で突然、こんなアナウンスがあった。

実はこれ、主催者の僧侶らが「新しい葬儀の形式」を模索するためにサプライズで開催した「模擬葬儀」の一コマ。 当時、自らの葬儀を観客席から見ていた養老さんは「そもそも自分の葬儀には関心がないんです」と語る。

「死んだら意識がなくなるので、現実に自分の葬儀を見ることはありません。葬儀は残される家族や親しい人たちが納得するためにあり、死んでしまう人間が自分の葬儀のことを考えても意味がない。 生きている人間が思うように行えばよく、ぼくには他人事なんです」(養老さん・以下同) 一方で近年は人がなかなか死ななくなり、「死ぬのが当たり前」という事実が遠ざけられている。

「最近の人々は『死』を遠ざけて、生きているのが当たり前と思っています。でも本当は死ぬことが当たり前で、だからこそ命は尊い。しかもいまは何事もコスパ重視で、葬儀も簡略化が進んでいます。そんなにコスパを考えるなら、生まれてすぐ死ぬのが最もコスパがいいはずなのに(苦笑)」 自らの生前葬には無関心の養老さんだが、人間にとって葬儀は大切だと語る。

「人間は普段は死を遠ざけていても、いざ親しい人が亡くなると理解が追いつかず、喪失感に襲われて、気持ちを落ち着かせるために儀式を行います。法事を何度も行うのもそのためでしょう。だからこそ葬儀が重要なわけで、別に生前葬をやりたい人はやればいいんです(笑い)」

【プロフィール】 養老孟司(ようろう・たけし) /解剖学者。東京大学名誉教授で450万部の大ベストセラー『バカの壁』の著者。虫好きとしても知られ、神奈川県鎌倉市の建長寺に虫塚を建立し、毎年6月4日に虫の供養を行う。

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